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「自分の絵なんてダメダメ」と言うべきでない理由

「私の絵なんて最低」

「誰も見ない」

 

このようなセリフを言ったことが無い絵描きは少ないだろう。

絵描きに限らず、とかく創作活動をする人間は、自分の作品を卑下しがちだ。

 

行き過ぎた謙遜や自虐は時として人を不快にする。

卑屈な作家への代表的な苦言はこれであろう。

 

「自分が好きな作品を作者自身に否定されたら、見る甲斐もなくなる」

 

作者がダメだと思っている作品でも、少なくとも自分は好きであるのに、その自分の好きを拒絶されては身も蓋もない。

一人のファンをないがしろにした万人のための作品もなかろう。

 

今回私は、自分の作品をむやみに卑下すべきではない理由として、さらに一つ提案したい。

それは

 

「自分の作品を貶めることに終始していることは、不誠実さそのものだから」

 

ということだ。

 

自虐する権利、卑下する権利は間違いなくあらゆる作家が持つ。

自分の作品を傍目で見れば、目を覆いたくなる気持ちになることも多いだろう。

 

問題は、そこから研鑽するかどうかだ。

 

自分の作品がダメダメだと認識し、そこから改善・研鑽していくならば、卑下することは自分への重要な叱咤である。

 

しかし、自分の作品がダメダメだと言いつつ、特に手も施さないという姿勢は、果たして善いことだろうか。

いや、そうであるはずはない。研鑽する代わりに卑下することで自分の力不足に責任を取った気になっているだけだ。

それだけならまだしも、その後研鑽する気もなくひたすら卑下することはつまり

 

「(がんばってるのに人気のない)自分の絵なんて最低(の評価を受けているのはすなわち

 

 世間の人間がこの作品を盛り立てないからだ)」

 

という、傲慢な考えすらにおわせるからかもしれない。

 

自分の作品を貶めるならばそれを糧に研鑽をすること、

そうでなければどんな拙作でも、史上最高の出来だと胸を張ること。

 

こうでなければ、自分の作品のダメダメさを許し続ける姿勢は不誠実かもしれない。